長野隧道と長野峠::つばや菓子舗五代目ブログ

つばや菓子舗五代目ブログ

五代目の四方山不定期更新日記
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

国道163号線は、かつて飛鳥奈良時代、朝廷と伊勢神宮を結ぶ為に造られた参宮街道で奈良街道と呼ばれていた。
1608年に藤堂高虎が入府して津城と伊賀上野城を結ぶ街道(長谷街道、大和街道など)を整備したが、長野峠の整備・拡幅工事を行ったのは豊臣氏滅亡後、正保元年(1644)以降。それからは伊賀街道と呼ばれるようになった。
伊賀と伊勢を遮る昔ながらの長野峠は「橡(トチ)ノ木越え」と呼ばれ、新旧トンネルのある場所ではない。
長野隧道(明治・昭和トンネル)の北東、距離にして390mほど離れた場所である。
現在、国道163号線で供用されている新長野トンネルは2008年(平成20年)3月開通で、延長1966m 幅7.0m 高さ4.7m。すごく綺麗で快適なトンネルである

 さて、今回の目的は、昭和トンネルの上部15mに存在しているという明治トンネルを見物することだ。有機栽培米農家のN氏もこのトンネルが見たかったようで、誘うと彼の軽トラに乗せてもらっていくことになった。

津市側の見学方法は分かりやすい。
新長野トンネルの東口から西へ旧道(旧R163)に入ると、犬塚がすぐ右手にある。ちなみに、ここから旧伊賀街道の古道があるが今回は割愛する。

明治トンネルへのアクセスは、犬塚よりさらに旧国道の舗装路を進んで行く。落石がある道を進んで、ヘアピンコーナーを過ぎ、最後の深いカーブを通り過ぎると道は直線となり、右手に公園広場がある。ここに車を駐車する。
2020-02-02 14-05-18
(昭和トンネル方向に歩き、振り向きざまに駐車場を撮影)

この公園には周辺案内板の他に明治トンネルの扁額が2つ設置されている。一つは、伊賀側に掲げられていた「其功以裕」で着工時の三重県令「岩村定高(元佐賀藩士)」の書によるもの。もう一つは伊勢側に設置されていた「補造化」で竣工時の三重県令「内海忠勝(禁門の変に従軍した元長州藩士)」の書によるものだ。

 明治トンネルを見に行く前に新長野トンネルが出来るまでに使われていたトンネル、通称:昭和トンネル=長野隧道を見に行く。
 長野隧道は1939年(昭和14年)に完成したもので延長303m 幅6m。当時は今までとは違いバスや大型車が通れ、軍事目的としての利用が可能になったという記事が誇らしげに書かれたそうだ。
今は西口も東口も強固な鉄板で封鎖されており、トンネル内を見ることはできない。
2020-02-02 14-02-47
この長野隧道の扁額は当時の三重県知事:佐藤正俊(福島県士族)県知事によるもの。
 筆者の子ども時代、伊賀市平田を自転車で出発し、このトンネルを自転車で通過して平木まで行き、津市の三重館前までバスに乗って遊びに行ったことがあった。でも、まだこのトンネル内の電灯が薄暗く(50年代前半に照明取り付け)、しかも電灯の間隔が広く、電灯と電灯の間が真っ暗で怖かったのを覚えている。車がやってくると明るくなるものの、長いトンネル内の暗闇はとても怖かった。対向車にダンプカーなど大型車が入ってくると自転車は通れるが、自動車のすれ違いが出来ずに普通車はバックでトンネル外まで押し出される・・・という事が日常的に行われてたようだ。
昭和のトンネルは伊勢側も伊賀側も同じようなものなので、どちらかだけでよいと思われる。

 昭和のトンネルの外観を見たら車を駐車した場所まで戻る。
そして、そこを起点にしている林道経ヶ峰線と反対方向を見ると、
2020-02-02 14-04-58
「長野隧道 明治のトンネル」の矢印看板。

看板に導かれて歩けば整備されたトンネル見学道があり、木組みの階段や朽ちて来つつある丸太橋。(この橋は渡らずに下を歩いたほうが安全?)
山腹道は、スギの落ち葉が堆積してしまっているが虎ロープも設置されている。
2020-02-02 14-07-51
植林を通り越すと広場のような谷あいに立派なファサードの明治トンネルが現れた。
2020-02-02 14-07-59
これが明治トンネル。初代長野隧道だ。
明治のトンネルは起工1880年(明治13年)11月12日、竣工1885年(明治18年)6月13日。
伊賀、伊勢の両側の住民が総工費10万5千776円92銭を出し合って作った。
長さ120間(216mとも205mとも?)、幅2間半(約4m)、高さ約3.8m。
荷馬車が通れる間取りになっているようだ。
明治初期の貨幣価値を令和(平成)に置き換えると1円=2万円らしいので、現在の金額で21億1553万8400円というところか?よくもそんなお金が集まったもんだ。

扁額がもぎ取られているのが痛々しいが、楔形に加工した花崗岩をアーチ状に組まれている構造と神殿風の重厚な柱の石積みに圧倒される。よく見ると石組みの途中から木が生えている!www

トンネルは途中で崩れているようだが、10mくらいまで中に入れる。
2020-02-02 14-07-599
昭和のトンネルでも素掘りであったり、モルタルの吹き付けだけのトンネルがあったりするが、ここのトンネルは側壁や天井部にも石組みが見え、明治前期の石造トンネルの建築物とは思えないくらいに立派だ。
ご覧のように、トンネル内に入るには防水の効いた靴または長靴がおススメ。

明治のトンネル見物が終わったら、長野峠も見に行こう!

公園駐車場から車で行きます。
林道経ヶ峰線を1.4km進んだところに長野峠(橡ノ木越え)。
2020-02-02 14-44-35
この日は獣害駆除用の檻が仕掛けられていた(~_~;)

新長野トンネルから旧国道に入った場所にあった犬塚から、ここ旧長野峠へ来るには、案内板に従って簡易舗装道と地道を行けば、やがてこの反対側の擬木階段
2020-02-02 14-44-02
となって経ヶ峰線の舗装林道に飛び出す。
そこを跨げば長野峠(橡ノ木越え)。

ここから伊賀へ向かって植林の中へ下っていくと、途中に石積みが残る茶店跡。
2020-02-02 15-10-46
松尾芭蕉が「奥の細道」の旅を終え、郷里の伊賀上野へ向かう長野峠で「初しぐれ 猿も小蓑を ほしげ也」という名句を捻りだしたと言われる場所がここのようだ。
山道をよく探せば石灯篭の部材が転がっている。
そして峠から15分で簡易舗装林道にぶつかる。
ここに案内板が欲しいところ。
ここで進路を左にとり、下って行けば伊賀側の旧国道に出る。
そこには「従是 旧長野峠道 大山田村」の石柱がある。
2020-02-02 15-31-34

さて、伊賀側の長野隧道に行くには、新長野トンネルの西口からすぐ東へ県道42号線へ進む。猿蓑塚を左手に見ながら進むと県道42号線は左へ分岐。トンネル見物は旧国道163号線を直進します。県道42号線分岐から170m進むと「従是 旧長野峠道 大山田村」の石柱。ただし、その後に長野峠(栃ノ木越え)分岐の看板が無いので注意が必要(現在、看板設置に向け調整中)。
さらにヤブに支配されつつある旧国道は片側一車線となって730m進むとトンネル西口駐車場。
ここには、旧隧道(明治トンネル)の道路開鑿記念碑がある。
駐車場から右を見れば、昭和トンネル。
2020-02-02 15-35-43
ここもガッチリ封鎖されていて中は見れない。

で、明治トンネルなのだが、入り口が伊勢側のように観光地化されていない。
駐車場から140mほど旧国道を戻って行くと右側に山へ斜めに入っていく広い未舗装路=山道がある。その山道を歩いていくと鉄製の橋を1つ渡る。
2020-02-02 15-44-13
白木の鳥居を潜り?
2020-02-02 15-44-58
祠が尾根の中腹にあるが?トンネルが無い???
2つ目の鉄製の橋を渡ろうとして橋上から左を見ると!?
2020-02-02 15-46-00
土?砂に埋まった谷の奥に石組み????
谷沿いに石組みを確認しに歩いていくと!
2020-02-02 15-47-19
伊勢側よりも簡素な感じの石組みと僅かなトンネルの隙間が!
周囲の石組みも残っているのは、いるんだけど・・・
2020-02-02 15-47-25
トンネル内部は?と穴にカメラを突っ込んで写真を撮ってみた。
2020-02-02 15-48-35
お?鍾乳石みたいなのもある?でも完全に埋まって反対側の明かりは見えない。
なんで、こんなことに?と思いながら鉄橋に戻ってくるとそこに、種明かしがあった。
明治トンネルが埋まっているのは、昭和のトンネルを明治トンネルの下に作ったのが原因。
もともと、谷筋に作られているトンネルは地下水・雨水が流入しやすい。
それが明治と昭和でダブルで水が出てくる。水が出る=土砂が流れ込む。
この水が原因で昭和のトンネルを土砂によって埋めたくなかったので、この橋のすぐ横に砂防堰堤を設けているのだ。砂防堰堤は土砂を下流に流さないために作られるのだが、堰堤の上部に土砂を貯める。その土砂堆積が何度も何度も数十年経過すると3m以上もある建造物を埋めてしまうのです。土砂浚渫すればトンネルの穴は無傷で復活するのでしょうか?

と、いう感じで長野隧道と長野峠見物でした。
| 雑記::散歩 |
| 04:24 PM | comments (0) | trackback (0) |

コメント



コメントする










右下の四角い枠に絵の中の文字を入力して下さい:


ボタンを押してから処理に時間がかかりますが、ボタンを押すのは1回だけでOKです。

https://blogn.tsubaya.com/tb.php/595

トラックバック