紅ヶ岳(860m)::つばや菓子舗五代目ブログ

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五代目の四方山不定期更新日記
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今年3月の連休のこと。
登山師匠T氏がファミリーハイキングの手ほどきをしてくれる事になった。
メンバーは、T氏、(当時)4歳の長男、(同)6歳の長女、嫁さん、私の5名。
行き先は奈良県曽爾村の紅ヶ岳?

自慢ではないが私は登山初心者。
かつて登った山は、若借りし日に富士山3,776m(新五合目:富士吉田口)、7年ほど前に乗鞍・剣ヶ峰3,026m(畳平から)、2年前に御在所岳1,212m(中道)だけ。
あとは散歩程度の山行だけ。

今回登る山は?
(写真を撮る余裕がなくて、ほとんど写真無しです。)
事前に対象となる地図を国土地理院の地図閲覧サービス(ウォッちず) で印刷して読図しておくようにと言われていたが、南は崖っぽく広葉樹の山であるような?という程度が確認できた。

それから事前に当日の装備・持ち物の指定が事細かにあった。
その中で驚いたのが方位を確認するための磁石(100円ショップで売ってるオイル入り)、ねんねこ(子供が歩けなくなった時のため)、懐中電灯、非常食・・・いったい何処へ行くと言うのか?

9:30 名張市青蓮寺ダムの駐車場待ち合わせ
青蓮寺川を遡り香落渓を車で走り小太郎岩で一旦停止。小太郎岩の後ろに見える山が紅ヶ岳だと教わる。
10:00 瓜ヶ久保の集落を通り、タコラ谷林道へ入り蛇谷出合付近で置き車。

全員が念入りに準備運動。

そしてT氏から平織りの輪になった紐が手渡される。テープスリングを言う紐だそうだ。
これを子どもの腰に巻きつけシートベンドという結び方で腰紐を作る。
さらにカラビナを手渡され、シートベンドの先端に取り付け、カラビナに別のテープスリングをひっかけた。
これで子ども達二人とも腰紐&紐付きで猿回しの猿状態になった。
T氏曰く、猿回し状態で子どもを先に歩かせ、足元が不安定になったり落ちそうになった時に親が腰から出ている紐を引っ張って転落・転倒防止する目的だとのこと。
この他にもエイトノット、テープ結び、インクノットなどという結び方の指南を受けた。
なぜファミリーハイキングにロープワーク?

10:20 いざ!出発。
「え(・∀・)?ほんまに?ここをうちの子どもが登るの?」
リーダーのT氏が登り始めたのは、林道からすぐの急斜面のヤブ。杉の落ち葉が堆積していて足場が悪い。子ども達の短い足では、なかなか登れない。でも、登らせる。少し下に林道を降りれば道があるんでしょ?ショートカット?
そしてT氏は子どもが「手をつなごう」としても子ども一人で歩くように指示。並んで歩けるほど広い道でもないし、両手が空いていないと危険回避が出来ないのである。

急斜面を抜けると植林帯をジグザグに登る林業用の仕事道を行く。

道はあるのだがご覧のように落ち葉の堆積が凄い。急な場所は大人でも足をとられる。

子ども達の足で約40分経過。
「ほな、ここの木に紐をつけておいたので、この紐と子ども達のカラビナを引っ掛けてセルフビレイ(滑落・転落防止)して待ってて。先にこの岩場を登ってフィックスロープ(トラロープ)張って、命綱(メインザイル)を下ろすわ。合図したら子どもを一人づつ命綱とカラビナ(腰紐)に繋いで、子どもを先に、親は足場や手の置き場所を下から指示しながら登ってきて!」と、言い残すとT氏はスルスルと岩場を登っていく。「え?」私達夫婦は5m以上はあろうかという岩場を見上げる。けっこう急で、しかも最初の岩がデカくて大人でも足の置き場所に悩む。

子どもはずり落ちそうになりながらもジャングルジムのようにニコニコ笑いながら登っていく。子どもには命綱があるが親には当然ない。

しかも子どもにはベストな足場を教え、自分は不安定な場所に足を乗せ、片手で子どもの片足や尻を上へ押し上げなければならない。
「こんな登り方したこと無い!」・・・これが正直な感想だ。

かなりの高さを登ったのがお分かりに?

でも、後から良く考えて見ると、子どもを岩場から落とさず登らせる時、自分がしていた登り方は岩場登りの基本である「三点確保」そのものだった。なんとも!T氏に親が試されていたということだ!

岩場をクリアすると細い尾根を行く。10分ほどで左手に滝が!

この滝かなりの高さで尾根のすぐ横にあった。高所恐怖症の私は長くは凝視できない。

しかしT氏は難度のある場所をクリアしたり長く歩いて子どもが飽きた頃、そして小腹が減ったり、のどに乾きを感じたらすぐに小休止をとって「子ども!休憩や!お菓子を食べて良い!お茶も飲み!」と言う。これはシャリバテなどからの低体温症や脱水症状にならないよう配慮してのこと。
この事は子ども達にとって決まった時間にだけオヤツが食べられる家や今までの生活とは別世界。
子ども達は、一気に山歩きが好きになった模様(汗)

また、歩いていて疲れてきたら立ち止まって深呼吸することを何度もさせた。これらが飽きずに登り続けるコツのようだ。

滝から更に30分。また岩場である。例によってT氏がトップでザイルを引っ張り上げていく。

そして子どもに命綱を付けて再度、岩登り。足場は狭く、またしても親の試練である。
T氏はスイスやアフガニスタンの海外の山を登ってきたアルピニストで、劔岳が青春の証であったりする人。ご近所の有閑マダム達を引き連れハイパーハイキング塾の塾長の傍ら、某山岳会の指導員として活躍している。また、すでに独立したお子さんが二人いるが、彼らを連れて色々な山を登られてきたファミリーハイキング経験者でもある。

岩場をクリアすると笹漕ぎである。

足場が悪い急斜面では笹の根元を3本以上まとめて掴むと「立ち木」を掴む時と同じくらいの安定感があることを学ぶ。細い笹も使い方によっては命を守る道具になる。

笹漕ぎを終え、広葉樹林帯に入った場所が明るくひらけていたので昼食となった。
ただし!じかに腰をおろしてはイケないと教わる。それは明るい森の落ち葉の下には「マダニ」が潜んでいて哺乳類(人間も含む)がやってくるとよじ登ってきて噛まれる。マダニは色んな病気を媒介するし、食いつかれると皮膚科で切開してもらわないとイケない場合がある。ケモノたちが生活している場所に遊びに来ているのだからビニールシートを敷くなりして自己防衛しなければならない。

この日の昼食は各自一玉持参するよう指示のあった「うどん」を使って簡単な「釜揚げうどん」。T氏が持参したコッヘル(鍋)とバーナーで各自持参した水を沸かし、「うどん」を茹でる。その間に各自のお椀に「めんつゆ」や薬味を入れ、オニギリを食べながら「うどん」が茹で上がるのを待つ。
これには子ども達を含め親も大満足。山の上で熱々の「うどん」が食べられるのは幸せである。

昼食を終え、広葉樹の森を歩き、鞍部から植林帯に再度突入すると急勾配。


子ども達を叱咤激励しながら紅ヶ岳860mに到着。
みなで記念撮影をして登頂した喜びを讃え合うが・・・下山(帰路)が大変だったのです。

来た道(植林帯の急勾配)を下り鞍部に降りたとき・・・

T氏が「同じ道を帰るのも面白く無いから沢沿いに帰ろう!」と言って進路を右に谷を降りだした。それに続くものの、けっこう谷は深い。

笹にしがみつきながら降りる沢・・・沢の渡渉・・・落ち葉の下には苔むした滑る岩・・・それらを幾度となく繰り返し、斜めになった斜面をトラバースぎみに下っていく。

その斜面は山から滲みでた雨水でヌカルミ、足元がズグズズ崩れていく。親子共々に笹を掴み・・・猿回しの状態で子どもを吊り上げ・・・写真を撮る余裕なんてこれっぽっちもない。でも脳裏にこの道程はくっきり焼き付いている。
T氏曰く、「しばらく来ない間に(炭焼きや林業従事者の)仕事道が崩壊していて道が消えてしまってる」と、のこと(泣)

要所、要所・・・いや、歩いている全行程が、わが子を谷に落とすまい!と、自分にとってベストな足場をわが子に譲り、自分は子どもを落とさないためのサポート出来る足場・・・自分なら足を置かない場所で踏ん張り。。。。
嫁さんと私だけなら、もっと景色も楽しめたのに!と、思いながら、子ども達に「えらいところに・・・」と思いながら下山。

17:20 全員無事に下山完了。登山開始から9時間が経過していた・・・

わが子達に後で今日の感想を聞くと・・・・「面白かった!また行きたい!」ですって(^^;)

これには必死だった親はビックリした。子ども達にとっては大冒険&おやつ食べ放題の天国だったようだ(汗)

この山、一般登山道しか知らない私と嫁にとって「難易度の高い山に連れていかれた!」というのが正直な感想。(T氏曰く、一般登山道を歩いただけ)
その反面、自分たち家族全員の「可能性」が発見できた!という、すごく嬉しい経験になった。

T氏においては、その昔、T氏自身が自分の子ども達を連れて登っておられた経験値から、わが子達に最善の準備を用意して頂き、「登山を経験する」という醍醐味を伝授された今日の登山はわが子達が最初にして最大の経験が出来たものとカミさん一同感謝している次第です。

17:30 T氏と別れ、タコラ谷の林道を降りて車中、子ども達に「お前たちはホンマにスゴイ経験をさせてもらった保育園児や!」と話していると長女(当時6歳)は「オッちゃんにお礼の手紙書くわ!」と言ってました。

香落渓から本日登った紅ヶ岳を見上げる。

車中、子ども達はやたら腹が減ったようで、残っていたオヤツを貪り食い・・・まず香落渓で弟(当時4歳)が眠りに付き、名張市内のホテルサンルートのネオンを読み上げたと思ったら眠りに付きました(汗)その後は伊賀市内の食事場所まで車中で寝ていました。
でも、晩飯を食べる場所に到着すると「お腹減った!」と起きてガツガツご飯を食べました!

なんだか家族の絆も強くなった一日だと思えるし、なんと言っても普段は唯我独尊で親の云う事を全く聞かなかった弟が「そこはアカン!右や!止まって待て!そこや!頑張れ!」という呼びかけに「はい!」と云う事をきくようになったのが驚きでした。

ほんま親も「試された!」という山行きでしたがT氏が居ればこそ達成できたこの充実感は、なんと表現してよいか分からない気持ちです。
T氏!本当にありがとうございました。

この日から本格的な我が家の山行が始まりました。
| 山登り::曽爾・室生 |
| 10:55 PM | comments (0) | trackback (0) |

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